第23节(第2/6页)
えず話の続きを聞くことにした。
「花岡靖子の勤め先を知っているか、と奴は訊いてきました。場所は知らないが飲食店だと聞いている、と私は答えました。さらに、仕事が終わるのは十一時頃で、それまでは娘も店で待っているらしい、と教えてやりました。もちろん、全部でたらめですが」
「でたらめを教えた理由は」
「奴の行動を制限するためです。いくら人気の少ない場所とはいえ、あまり早い時間に行かれても困りますからね。花岡靖子の仕事が十一時までで、それまでは娘も帰らないと聞けば、奴もそれまでアパートを訪ねていくわけにはいかんでしょう」
「失礼」草薙は手を出して、彼の話を遮さえぎった。「あなたはそれだけのことを、その瞬間にすべて考えたというんですか」
「そうです。それが何か」
「いや咄嗟によくそれだけのことを考えられるなと感心しているんです」
「大したことではないでしょう」石神は真顔に戻っていった。「奴はとにかく花岡靖子に会いたくて仕方がなかったわけです だからこっちとしては、その気持ちを利用してやるだけでいい。難しいことじゃない」
「そりゃ、あなたにとってはそうかもしれないが」草薙は唇を舐めた。「で、その後は」
「仕上げに私の携帯電話の番号を教えました。もしアパートが見つからなかったら連絡をくれ、といっておいたんです。ふつうそこまで親切にされたら、少しは怪しむものでしょうが、あの男は微塵みじんも疑っちゃいなかった。根本的に頭が悪いんでしょう」
「初対面の人間にいきなり殺意を抱かれるとは、誰も考えませんよ」
「初対面だからこそ、おかしいと思うべきなのです。ところがあの男は、でたらめな住所を書いたメモを大事そうにポケットに入れて、軽い足取りで立ち去りました。私はそれを確かめた後、部屋に入り、準備を始めました」
そこまでしゃべってから、石神はおもむろに湯飲み茶碗に手を伸ばした。ぬるくなっているはずの茶を、彼はうまそうに飲んだ。
「その準備とは」草薙は先を促した。
「それほど大したものじゃありません。動きやすい格好に着替えて、時間が来るのを待ちました。その間、どうすれば確実に奴を殺せるか、考えました。いろいろな方法を検討した結果、絞殺を選びました。それが最も確実だと思ったからです。刺殺や撲殺だと、どんなふうに返り血を浴びるか予想できませんからね。一撃で仕留める自信もなかった。また絞殺なら、凶器も簡単です。とはいえ、丈夫なものでないといけないから、炬燵のコードを使うことにしました」
「なぜコードだったんですか。丈夫な紐ならほかにいくらでもあると思いますが」
「候補として、ネクタイや荷造り用のビニール紐なども考えました。しかしどちらも手の中で滑りやすいのです。また伸びるおそれもある。炬健のコードが一番でした」
「するとそれを持って現場に」
石神は頷いた。
「十時頃、家を出ました
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