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第5节(第3/6页)

    害を請求すればいいのかと草薙に質問してきた。

    件くだんの自転車については、ハンドルをはじめフレーム、サドル等から複数の指紋が採取された。

    自転車以外の遺留品としては、現場から約百メートル離れたところで、被害者のものと思われる衣類が見つかっていた。一斗缶の中に押し込んであり、その一部が燃えていた。ジャンパー、セーター、ズボン、靴下、そして下着という内容である。火をつけてから犯人は立ち去ったが、思ったようには燃え続けず、自然に火が消えたものと推察された。

    それらの衣類について製造元から当たるというようなことは、捜査本部では提案されなかった。いずれの衣類も大量に出回っていることは明白だったからだ。そのかわりに衣類や死体の体格などから、殺される直前の被害者の様子がイラストに描かれた。一部の捜査員はそのイラストを手に、篠崎駅を中心に聞き込みを行った。しかしさほど目立つ服装ではないせいか、これといった情報は集まらなかった。

    イラストはニュース番組でも紹介された。こちらは山のように情報が集まった。だがいずれも旧江戸川べりで見つかった死体に結びつくものではなかった。

    一方、捜索願の出されている人物についても虱潰しらみつぶしに照合が行われた。しかし該当する人物は見つからなかった。

    江戸川区を中心に、独り暮らしで最近姿を見かけなくなった男性がいないか、宿やホテルの客で突然消えた者がいないか、徹底的に調べられることになった。やがてひとつの情報に捜査員たちは食いついた。

    亀戸にあるレンタルルーム扇屋という宿から、一人の男性客がいなくなっていた。それが判明したのは三月十一日である。つまり死体が発見された日だ。チェックアウトタイムが過ぎていたので従業員が様子を見に行ったところ、わずかな荷物が残っているだけで、客の姿はなかった。報告を受けた経営者は、前払い金をもらっているので警察には届けなかった。

    早速部屋や荷物から毛髪、指紋等が採取された。その毛髪は死体のものと完全に一致した。また、例の自転車から採取した指紋のひとつが、部屋や荷物に残されていたものと同一と判断された。

    消えた客は宿帳に、富樫慎二、と書いていた。住所は新宿区西新宿とあった。

    地下鉄森下駅から新大橋に向かって歩き、橋の手前にある細い道を右に折れた。民家が建ち並び、そのところどころに小さな商店が見える。それらの店の殆どに、昔からずっと商売を続けている雰囲気が漂っていた。ほかの町ならばスーパーや大型店に淘汰されてしまいそうだが、たくましく生き残っていけるところが下町のよさなのかもしれない、と草薙は歩きながら思った。

    時刻は夜の八時を過ぎたところだった。どこかに銭湯があるらしく、洗面器を抱えた老女が草薙たちとすれ違った。

    「交通の便もいいし、買い物には便利そうだし、住むにはよさそうなところですね」隣で岸谷が呟くようにいった。

    「何がいいたいんだ」


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