第7节(第5/6页)
缸婴·螭扦い毳ⅴ雪`トの住所を湯川に教えた。それをメモに取る物理学者は、殺人事件には興味をなくしている様子だった。
午後六時二十八分、花岡靖子が自転車に乗って帰ってきた。その様子を石神は部屋の窓から見た。彼の前にある机には、膨大な量の計算式を書いた紙が並んでいた。それらの計算式と格闘するのが、学校から帰宅した後の彼の日課だった。しかし、せっかく柔道部の練習が休みだったというのに、今日はその作業に全く進展がなかった。今日にかぎらず、ここ数日はずっとそうだ。部屋で静かに隣室の様子を窺う、というのが習慣になりつつある。刑事が訪ねてこないかどうかを確かめているのだ。
刑事たちは昨夜も、やってきたようだ。以前石神のところにも来た、あの二人の刑事だ。警察手帳の身分証にあった草薙という名字は覚えている。
靖子の話によれば、予想通り彼等は映画館でのアリバイを確認しにきたようだ。映画館で何か印象的な出来事は起こらなかったか。映画館に入る前か出た後、あるいは映画館の中で誰かと会わなかったか。チケットの半券はあるか。中で何か買ったのならそのレシートはあるか。映画の内容はどんなもので、出演者は誰だったか――。
カラオケボックスのことは何も訊かなかったそうだから、そちらは裏づけが取れたのだろう。もとより、取れて当然だ。そういう場所を意識的に選んだのだ。
チケットの半券とパンフレットのレシートを、石神から指示された手順で刑事に見せた、と靖子はいった。映画の内容以外の質問には、何も思いつかないの一点張りで押し通したという。それもまた石神が事前に教えておいたとおりだ。
刑事たちはそれで帰ったそうだが、彼等があっさり諦めるとは思えなかった。映画館のアリバイを確認しに来たということは、花岡靖子を疑うに足るデータが出てきたとみるべきだろう。そのデータとはどんなものか。
石神は立ち上がり、ジャンパーを手にした。テレホンカードと財布、そして部屋の鍵を持って部屋を出た。
階段にさしかかったところで下から足音が聞こえてきた。彼は歩を緩めた。少し俯き加減になった。
階段を上がってきたのは靖子だった。彼女は、前にいるのが石神だとすぐには気づかなかった様子だ。すれ違う直前になって、はっとしたように足が止まりかけた。何かをいいたそうな気配が、下を向いたままの石神にも伝わってきた。
彼女が声を発する前に石神がいった。「こんばんは」
他の人間に接する時と同様の口調と低い声を彼は心がけた。そして決して目を合わせようとはしなかった。歩調も変えなかった。階段を黙々と下りていった。
どこで刑事が見張っているかわからないから、顔を合わせても、あくまでも単なる隣人同士のように振る舞うこと、というのも石神から靖子に出した指示のひとつだ。それを思い出したらしく、彼女も小声で、こんばんは、といった後は、無言で階段を上がっていった。
いつもの公衆電話まで
(本章未完,请翻页)