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第16节(第5/6页)

    。間違いなく工藤の車だった。

    道路の右側にはホテルが建っている。工藤はそこに入るつもりらしい。

    石神は躊躇わず、ベンツの後ろについた。怪しまれているかもしれないが、ここまでついてきたからには引っ込みがつかない。

    右折信号が出ると、ベンツが動きだした。石神もついていく。ホテルの門を入って左側に、地下へと続くスロープがある。駐車場への入り口らしい。ベンツに続いて、石神もそこへ車を滑り込ませた。

    駐車場のチケットを取る時、工藤が小さく振り向いた。石神は首をすくめた。工藤が何かに気づいているのかどうかはわからない。

    駐車場は空いていた。ベンツはホテルへの入り口に近い場所に停まった。石神はそこからかなり離れたところに車を停めた。エンジンを切るや否やカメラを構えた。

    工藤がベンツから降りた。そのシーンでまずシャッターを押した。工藤は石神のほうを気にしている。やはり何か疑っているようだ。石神は頭をさらに下げた。

    だが工藤はそのままホテルの入り口へと向かった。彼の姿が消えるのを確認してから、石神は車を発進させた。

    とりあえず、この二枚だけでもいいか――。

    駐車場にいた時間が短かったため、出口のゲートをくぐる時に料金は請求されなかった。石神は慎重にハンドルをきり、細いスロープを上がっていった。

    この二枚の写真に応じた文面を、彼は考えていた。頭の中で組み立てた文章は、大体次のようなものだった。

    貴女が頻繁に会っている男性の素性をつきとめた。写真を撮っていることから、そのことはおわかりいただけると思う。

    貴女に訊きたい。この男性とはどういう仲なのか。

    もし恋愛関係にあるというのなら、それはとんでもない裏切り行為である。

    私が貴女のためにどんなことをしたと思っているのだ。

    私は貴女に命じる権利がある。即刻、この男性と別れなさい。

    さもなくば、私の怒りはこの男性に向かうことになる。

    この男性に富樫と同じ運命を辿らせることは、今の私には極めて容易である。その覚悟もあるし、方法も持っている。

    繰り返すが、もしこの男性と男女の関係にあるのならば、そんな裏切りを私は許さない。必ず報復するだろう。

    石神は組み立てた文章を口の中でぶつぶつと復唱した。威嚇いかく効果があるかどうか、吟味した。

    信号が変わり、ホテルの門をくぐろうとしたその時だった。

    歩道からホテルに入ってくる花岡靖子を見て、石神は思わず目を剥いていた。

    12

    靖子がティーラウンジに入っていくと、奥の席で手を挙げる者がいた。ダークグリーンのジャケットを着た工藤だった。店内は三割ほどの席が埋まっている。カップルの姿もあるが、商談を交わしている様子のビジネスマンが目についた。その中を、やや俯き加減にして彼女は歩いた。

    「急に呼び出して悪かったね」工藤は笑顔でいった。「とりあえず何か飲み物でも」


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