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第28节(第1/6页)

    に暮れていた。驚きのあまり、彼の告白の言葉は半分も彼女の頭には入ってこなかった。それでも意図はわかった。わかったからこそ混乱していた。

    「ごめん。ちょっと唐突すぎたかな」工藤は照れ笑いを浮かべた。「あわてて答えを出す必要はないから。美里ちゃんと相談してくれてもいい」そういって靖子の手にあるケースの蓋を閉じた。

    「よろしく」

    靖子は発すべき言葉が思いつかなかった。様々なことが頭の中を駆け巡っていた。石神のことも――いや、それが大半かもしれない。

    「考えておきます」そう答えるのが精一杯だった。

    工藤は納得したように頷いた。それを見てから靖子は車を降りた。

    彼の車が去るのを見届けてから彼女は部屋に戻ることにした。部屋のドアを開ける時、隣のドアに目を向けた。郵便物が溢れているが、新聞はない。警察に出頭する前に、石神が解約したのだろう。それぐらいの配慮は、彼にとっては何でもないことに違いなかった。

    美里はまだ帰っていなかった。靖子は座り込み、長い吐息をついた。それからふと思いついて、そばの引き出しを開けた。一番奥に入れてある菓子箱を取り出し、蓋を取った。過去の郵便物を入れた箱だが、その一番下から封筒を抜き取った。封筒には何も書かれていない。中には一枚のレポート用紙が入っていた。文字がびっしりと書かれている。石神が最後の電話をかけてくる前に、靖子の部屋の郵便受けに投入したものだ。この文書と一緒に三通の封筒が入っていた。いずれも彼が靖子のストーカーをしていたことを示すものだった。現在その三通の手紙は警察にある。

    文書には手紙の使い方、やがて彼女のもとに訪ねてくるであろう刑事たちへの応答の仕方などが、細かく記されていた。靖子に対してだけでなく、美里への指示も書いてあった。あらゆる状況を見越し、どんな質問を受けても花岡母娘がぐらつかないでいられるような配慮が、その丁寧な説明文に込められていた。そのおかげで靖子も美里も、うろたえることなく、堂々と刑事たちと対峙できた。ここで下手な対応をして嘘が見抜かれては、石神のせっかくの苦労が水の泡になるという思いが靖子にはあった。おそらく美里も同じ気持ちだろう。

    それらの指示の最後に、次の文章が付け足してあった。

    工藤邦明氏は誠実で信用できる人物だと思われます。彼と結ばれることは、貴女と美里さんが幸せになる確率を高めるでしょう。私のことはすべて忘れてください。決して罪悪感などを持ってはいけません。貴女が幸せにならなければ、私の行為はすべて無駄になるのですから。

    読み返してみて、また涙が出た。

    これほど深い愛情に、これまで出会ったことがなかった。いやそもそも、この世に存在することさえ知らなかった。石神のあの無表情の下には、常人には底知れぬほどの愛情が潜んでいたのだ。

    彼の自首を知った時、単に自分たちの身代わりで出頭しただけだと思っていた。だが湯川の話を聞いた今
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