第3节(第6/6页)
「問題は警察がどう見るか、です。その嘘は通用しないと思いますよ」
「どうしてですか」そういってから、こんなふうに訊くこと自体、嘘を認めたようなものだと靖子は気づいた。
石神は死体の右手を指差した。
「手首や手の甲に内出血の痕がある。よく見ると指の形をしている。おそらくこの男性は後ろから首を絞められて、必死でそれを外そうとしたんでしょう。それをさせまいとして、彼の手を掴んだ痕だと思われます。一目瞭然というやつです」
「だからそれもあたしがやったんです」
「花岡さん、それは無理ですよ」
「どうしてですか」
「だって、後ろから首を絞めたんでしょう その上で彼の手を掴むなんてことは絶対にできません。腕が四本必要になってくる」
石神の説明に、靖子は返す言葉を失った。出口のないトンネルに入ったような気分だ。
彼女はがっくりと項垂うなだれた。一瞥いちべつしただけの石神がここまで見抜けるのだから、警察ならばさらに厳密に調べ抜くだろう。
「あたし、どうしても美里だけは巻き込みたくないんです。この子だけは助けたい」
「あたしだって、おかあさんを刑務所に入れたくないよ」美里が泣き声でいった。
靖子は両手で顔を覆った。「一体どうしたら」
空気がずっしりと重くなったような気がした。その重みに靖子は潰されそうだった。
「おじさん」美里が口を開いた。「おじさんは、おかあさんに自首を勧めにきたんじゃないの」
石神は一拍置いてから答えた。
「私は花岡さんたちの力になれればと思って電話したんだよ。自首するということなら、それでいいと思うけど、もしそうでないなら、二人だけじゃ大変だろうと思ってね」
彼の言葉に、靖子は顔から手を離した。そういえば電話をかけてきた時、この男は妙なことをいった。女性だけで死体を始末するのは無理ですよ――。
「自首しないで済む方法って、ありますか」美里がさらに訊いた。
靖子は顔を上げた。石神は小さく首を傾かしげていた。その顔に動揺の色はない。
「事件が起きたことを隠すか