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発生の今月十日だ。で、容疑者の娘が十二日にそのことを同級生に話している」湯川のコップにビールを注ぎながら草薙はいった。「ついさっき、その確認をしてきた。俺が映画を見たのは、その下準備だ」
「言い訳はわかったよ。それで同級生から話を聞いた結果はどうだった」
「何ともいえないな。その子によると不自然なところはなかったらしい」
上野実香というのが、その同級生の名前だ。彼女はたしかに十二日に、花岡美里から母親と映画に行った話を聞かされたという。その映画は実香も見たので、二人で大いに盛り上がったとのことだった。
「事件の二日後というのが引っかかるな」湯川がいった。
「そうなんだ。映画を見た者同士で盛り上がりたいなら、翌日すぐに話をするのがふつうだろ。それで俺はこう考えてみた。映画を見たのは十一日じゃないか、とね」
「その可能性はあるのか」
「ない、ともいいきれない。容疑者は仕事が六時までだし、娘もバドミントンの練習を終えてすぐに帰れば、七時からの上映に間に合う。実際、そういうふうにして十日は映画館に行ったと主張しているわけだし」
「バドミントン 娘はバドミントン部か」
「最初に訪ねていった時、ラケットが置いてあったんで、すぐにわかったんだ。そう、そのバドミントンというのも気になっている。おまえももちろん知ってるだろうけど、あれはかなり激しいスポーツだ。中学生とはいえ、クラブの練習をすればくたくたに疲れる」
「君のように要領よくさぼれば話は別だがね」おでんのコンニャクに辛子を塗りながら湯川はいった。
「話の腰を折るなよ。要するに俺がいいたいのは」
「クラブの練習でくたくたになった女子中学生が、その後で映画館に行くのはともかく、夜遅くまでカラオケボックスで歌っていたというのは不自然だ――そういいたいわけだろ」
草薙は驚いて友人の顔を見た。まさにそのとおりだった。
「でも一概に不自然とはいえないぜ。体力のある女の子だっているわけだし」
「それはまあそうだけど、痩せてて、見るからに体力がなさそうなんだよな」
「その日は練習がきつくなかったのかもしれない。