设置

关灯

第12节(第3/6页)

    慧眼けいがんに舌を巻いた。

    「そうだったかな。いや、全然知らない人だ」石神は懸命に平静を装った。

    「そうか。それならいいんだ」湯川は疑った表情を見せなかった。

    「ところで急用というのは何なんだ。弁当を買うのだけが目的じゃないだろう」

    「そうだった。肝心のことをまだ話してなかった」湯川は顔をしかめた。「さっきも話したように、あの草薙という男は、何かというと僕のところに面倒な相談事を持ち込んでくる。今度も、弁当屋の女性の隣に君が住んでいると知って、早速やってきた。しかも、じつに不愉快なことを頼んできた」

    「というと」

    「警察では、依然として彼女を疑っているらしい。ところが、犯行を立証するものは何ひとつ見つけられないでいる。そこで、彼女の生活を何とか逐一監視したいと考えている。でも、見張るといったって限界がある。で、目をつけたのが君のことだ」

    「まさか俺にその監視役をやれとでも」

    湯川は頭を掻いた。

    「その、まさか、だよ。監視といっても四六時中見張ってるわけじゃない。ただ、隣の部屋の様子に少し気をつけて、何か変わったことがあれば連絡してほしい、ということだ。要するにスパイをしろってことだ。全くもう図々しいというか、失礼なことをいう連中だ」

    「湯川は、それを俺に依頼しに来たというわけか」

    「もちろん、正式な依頼は警察からくるだろう。その前に打診してくれと頼まれたんだ。僕としては君が断っても構わないと思うし、断ったほうがいいとさえ思っているんだけど、これもまあ浮き世の義理というやつでね」

    湯川は心底弱っているように見えた。しかし警察が民間人にそんなことを頼むだろうか、とも石神は思った。

    「わざわざべんてん亭に寄ったのも、それと関係があるのか」

    「正直いうとそうなんだ。その容疑者の女性というのを、一度この目で見ておきたくてね。だけど、彼女に人を殺せるとは思えないな」

    自分もそう思う、といいかけて、石神はその言葉を呑み込んだ。

    「さあね、人は見かけによらないからな」逆に、そう答えた。

    「たしかにね。それで、どうだい。警察からそういう依頼が来た場合、承諾できるかい」

    石神は首を振った。

    「正直なところ、断りたいな。他人の生活をスパイするなんて趣味に合わないし、そもそも時間がない。こう見えても忙しいんでね」

    「だろうな。じゃあ、僕のほうから草薙にそういっておこう。この話はここまでだ。気を悪くしたなら謝る」

    「別にそんなことはないさ」

    新大橋が近づいてきた。ホームレスたちの仮住まいも見える。

    「事件が起きたのは三月十日、とかいってたな」湯川がいった。「草薙の話では、その日、君はわりと早くに帰宅したそうだね」

    「特に寄るところもなかったからな。七時頃には帰った、と刑事さんには答えたんじゃなかったかな」

    「その後は例によって、部屋で
    (本章未完,请翻页)