第12节(第4/6页)
数学の超難問と格闘かい」
「まあ、そんなところだ」答えながら石神は、この男は俺のアリバイを確認しているんだろうか、と考えた。もしそうだとしたら、何らかの疑いを石神に対して抱いていることになる。
「そういえば、君の趣味について聞いたことがなかったな。数学以外に何かあるのかい」
石神はふっと笑った。
「趣味らしい趣味はない。数学だけが取り柄だ」
「気分転換はしないのか。ドライブとか」湯川は片手でハンドルを操る格好をした。
「したくともできない。車がないからな」
「でも免許は持っているんだな」
「意外か」
「そんなことはない。忙しくても、教習所に通う時間ぐらいはあるだろうからな」
「大学に残ることを断念した後、大急ぎで取りに行った。就職に役立つかもしれないと思ってね。実際には、何の関係もなかったが」そういった後、石神は湯川の横顔を見た。
「俺が車を運転できるかどうかを確認したかったのか」
湯川は心外そうに瞬きした。「いや。どうして」
「そんな気がしたからだ」
「別に深い意味はない。君でもドライブぐらいはするのかなと思っただけだ。それに、たまには数学以外の話をしたいと思ってね」
「数学と殺人事件以外の話、だろ」
皮肉のつもりだったが、はははと湯川は笑った。「うん、そのとおりだ」
新大橋の下にさしかかった。白髪頭の男が鍋をコンロに載せ、何かを煮ていた。男の脇には一升瓶が置かれていた。ほかにも何人か、ホームレスが外に出ている。
「じゃぁ、僕はこれで失礼する。不愉快なことを聞かせて申し訳なかった」新大橋の横の階段を上がったところで湯川はいった。
「草薙刑事に謝っておいてくれ。協力できなくてすまないと」
「謝る必要なんてない。それより、また会いに来てもいいかな」
「そりゃあ構わないが」
「酒を飲みながら、数学の話をしよう」
「数学と殺人事件の話、じゃないのか」
湯川は肩をすくめ、鼻の上に皺を作った。
「そうなるかもな。ところで、数学の新しい問題をひとつ思いついた。暇な時に考えてくれないか」
「どういうのだ」
「人に解けない問題を作るのと、その問題を解くのとでは、どちらが難しいか。ただし、解答は必ず存在する。どうだ、面白いと思わないか」
「興味深い問題だ」石神は湯川の顔を見つめた。「考えておこう」
湯川はひとつ頷き、踵を返した。そのまま通りに向かって歩きだした。
9
手長エビを食べ終えた時、ちょうどワインのボトルが空になった。靖子は自分のグラスに残ったワインを飲み干し、小さな吐息をついた。本格的なイタリアンを食べるのはいつ以来だろうと思った。
「もう少し何か飲むかい」工藤が尋ねてきた。彼の目の下は、かすかに赤くなっていた。
「あたしはもう結構。工藤さん、何か頼めば」
「いや、
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