第13节(第3/6页)
里は炬燵から出ると、黙って奥の部屋へ行った。
襖が閉じられるのを見届けてから、靖子はチェーンを外し、再びドアを開けた。
「何でしょうか」
靖子が訊くと岸谷は頭を下げた。
「すみません、また映画の件なんですが」
靖子は思わず眉をひそめていた。石神から、映画館へ行ったことについては警察にしつこく訊かれることになる、といわれていたのだが、まさにそのとおりだと思った。
「どういったことでしょうか。もう、あれ以上はお話しすることはないんですけど」
「お話はよくわかりました。今日は例の半券をお借りしたいと思いまして」
「半券 映画館のチケットですか」
「そうです。前に見せていただいた時、草薙のほうから、大切に保管しておいてくださいとお願いしたと思うんですが」
「ちょっと待ってください」靖子は戸棚の引き出しを開けた。前に刑事たちに見せた時には、パンフレットの間に挟んであったのだが、その後引き出しに移したのだ。
美里の分と合わせて二枚の半券を、彼女は刑事に差し出した。ありがとうございます、といって岸谷は受け取った。彼は白い手袋をはめていた。
「やっぱり、あたしが一番疑われているんですか」靖子は思い切って訊いてみた。
とんでもない、と岸谷は顔の前で手を振った。
「容疑者を絞れなくて困っている状態です。だから怪しくない人はどんどん消去していこうとしているんです。半券をお借りするのもそれが目的です」
「半券で何かわかるんですか」
「それは何とも断言できませんが、参考にはなるかもしれません。あなた方があの日に映画館に行った、ということを証明できれば一番いいんですがあれから何か思い出されたことはありますか」
「いえ、前に許した以上のことは何も」
「そうですか」岸谷は室内に目をやった。
「いつまでも寒いですね。おたくでは、毎年電気炬燵を使用されてるんですか」
「炬燵ですか。ええまあ」靖子は後ろを振り返り、動揺を刑事に悟られまいとした。彼が炬燵を話題にしたことが偶然だとは思えなかった。
「この炬燵は、いつ頃から使っておられるんですか」
「さあもう、四、五年になると思います。それがどうしたんですか」
「いえ、別に」岸谷は首を振った。「ところで、今日は仕事の後、どこかに行っておられたのですか。お帰りが遅かったようですが」
不意をつかれ、靖子はたじろいだ。同時に、刑事たちがアパートの前で待っていたらしいと察知した。ということは、タクシーを降りるところも見られているかもしれない。
下手な嘘はつけない、と思った。
「知り合いの方と食事に行っていたんです」
極力余分なことはしゃべらないでおこうと思ったのだが、刑事はこんな答えでは納得しなかった。
「タクシーであなたを送ってきた男性ですね。どういったお知り合いですか。差し支えなければ教
(本章未完,请翻页)