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巳珕Tに当たったとしても無駄足でしょう。彼女はそんなことを頼んだりする人じゃない。そんな悪女でもなければ馬鹿でもない。もう一つ付け加えれば、私も、好きな人間から頼まれたからといって人殺しをするほど馬鹿じゃない。草薙さんとおっしゃいましたね、わざわざ来ていただいたのですが、どうやら収穫は何もないようですよ」早口でまくしたてた後、彼は立ち上がった。さっさと帰れ、という意味のようだ。
草薙は腰を上げた。だがメモを取る手はそのままだ。
「三月十日は、いつものように会社に出ておられましたか」
工藤は一瞬、虚をつかれたように目を丸くした。次にその目を険しくした。
「今度はアリバイですか」
「まあ、そういうことです」
取り繕つくろう必要はないと草薙は思った。どうせ工藤は腹を立てている。
「ちょっと待ってください」工藤は書類鞄の中から分厚い手帳を出してきた。それをパラパラしてめくり、吐息をついた。
「何も書いてないから、たぶんいつもと同じでしょう。六時頃に会社を出たと思います。疑うなら社員に訊いてみてください」
「会社を出た後は」
「だから、何も書いてないから、たぶんいつもと同じです。ここへ帰ってきて、適当に何か食って寝たんでしょう。一人だから証人はいません」
「もう少しよく思い出していただけませんか。こちらとしても、容疑者リストの人数を減らしたいんですよ」
工藤は露骨にげんなりした顔を作り、もう一度手帳に目を落とした。
「ああそうか、十日か。ということは、あの日だな」独り言のように呟いた。
「何か」
「取引先に出向いた日です。夕方行ってそうだ、焼き鳥を御馳走になったんだった」
「時間はわかりますか」
「正確には覚えてないな。九時ぐらいまで飲んでたんじゃなかったかな。その後は真っ直ぐに帰りました。相手はこの人です」工藤は手帳に挟んであった名刺を出してきた。デザイン事務所のようだった。
「結構です。ありがとうございました」草薙は一礼し、玄関に向かった。
彼が靴を履いていると、「刑事さん」と工藤が声をかけてきた。
「いつまで彼女のことを見張っているつもりですか」
草薙が黙って視線を返すと、彼は敵意をこめた表情で続けた。
「見張っていたから、私と彼女が一緒にいるところを目撃したわけでしょう そうして、おそらく私のことを尾行した」
草薙は頭を掻いた。「参りましたね」
「教えてください。いつまで彼女を追いかけ回すつもりですか」
草薙はため息をついた。笑顔を作るのはやめて工藤を見つめた。
「それはもちろん、その必要がなくなるまで、です」
まだ何かいいたそうにしている工藤に背を向け、お邪魔しました、といって草薙は玄関のドアを開けた。
マンションを出ると、彼はタクシーを拾った。
「帝都大学へ」
運転手が返事をし
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