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第14节(第6/6页)

    て車を発進させるのを確認してから、草薙は手帳を開いた。自分の走り書きを見ながら工藤とのやりとりを反芻した。アリバイの裏づけを取る必要はある。しかし彼としては結論は出ていた。

    あの男はシロだ。本当のことをいっている――。

    そして、本気で花岡靖子に惚れている。さらに、彼がいったように、花岡靖子に協力しようとする人間がほかにいる可能性は大いにある、と思った。

    帝都大学の正門は閉じられていた。ところどころに照明灯があるので、真っ暗ではなかったが、夜の大学には不気味な空気が籠もっているようだった。草薙は通用門から中に入り、守衛室で来訪の目的を告げてから奥に進んだ。「物理学科第十三研究室の湯川助教授と会うことになっている」と守衛には説明したのだが、じつはアポイントメントは取っていなかった。

    学舎内の廊下はひっそりとしていた。しかし無人でないことは、いくつかのドアの隙間から漏れている室内の明かりでわかった。おそらく何人かの研究者や学生たちが、黙々とそれぞれの研究に没頭しているに違いない。そういえば湯川もしばしば大学に泊まり込んでいるという話を、草薙は以前聞いたことがあった。

    湯川に会いに行こうということは、工藤の部屋に行く前から決めていた。方向が同じだということもあるが、ひとつだけ確認しておきたいことがあったのだ。

    なぜべんてん亭に湯川は現れたのだろうか。大学の同窓である数学教師と一緒だったが、彼と何か関係があるのか。もし事件のことで何か気づいたことがあるのなら、なぜ草薙にいわないのか。それとも、数学教師と懐かしい昔話に花を咲かせたかっただけで、べんてん草に寄ったことには特に意味はないのか。

    だが草薙には、湯川が何の目的もなく、未解決事件の容疑者が働いている店にわざわざ行くとは思えなかった。余程のことがないかぎり、草薙が担当している事件には極力関わらないようにする、というのが湯川のこれまでのスタンスだったからだ。面倒に巻き込まれたくないのではなく、草薙の立場を尊重してくれているからだ。

    第十三研究室のドアには行き先表示板が吊されていた。ゼミの学生や大学院生の名前と並ん