第15节(第3/6页)
」
刑事の台詞は、急遽きゅうきょ取り繕ったもののようにしか石神には聞こえなかった。すると湯川は独断で、あんなことをいいに来たということになる。その目的は何なのか。
石神は足を止め、草薙のほうに向き直った。
「そういうことを訊くために、今日はわざわざいらっしゃったんですか」
「いや、すみません。今のは前置きです。用件は別にありまして」草薙は上着のポケットから数枚の写真を出してきた。
「この人物を見たことはありませんか。私の隠し撮りなんで、あまりうまく写ってないんですが」
写真を目にし、石神は一瞬息を呑んだ。
そこに写っているのは、彼が現在最も気にしている人物だった。名前は知らない。身分も知らない。わかっているのは、靖子が親しくしている、ということだけだ。
「どうですか」草薙が再び訊いてきた。
何と答えればいいだろう、と石神は考えた。知らない、といってしまえばそれで済む。だがそれでは、この男に関する情報を引き出すこともできない。
「見たことがあるような気もしますね」石神は慎重に答えた。「どういう人ですか」
「どこで見たのか、もう少しよく考えていただけませんか」
「そういわれても、毎日いろいろな人と会いますからね。名前や職業を教えていただけると、記憶を辿りやすいんですが」
「クドウという人です。印刷会社を経営しています」
「クドウさん」
「ええ。工場の工に、藤と書きます」
工藤というのか――石神は写真を見つめた。それにしてもなぜ刑事が、あの男について調べているのか。当然、花岡靖子との絡みだろう。つまりこの刑事は、花岡靖子と工藤の間に特殊な繋がりがあると考えているわけか。
「いかがですか。何か思い出されたことはありますか」
「うーん、見たことがあるような気もするんですが」石神は首を捻った。「すみません。どうも思い出せない。もしかしたら、誰かと間違えているのかもしれないし」
「そうですか」草薙は残念そうな顔で写真を懐にしまい、代わりに名刺を出した。
「もし何か思い出されたら、連絡をいただけますか」
「わかりました。あの、その方が事件に何か関係があるんですか」
「それはまだ何とも。それを調べているわけでして」
「花岡さんに関係している人なんですか」
「ええ、それはまあ一応」草薙は言葉を濁した。情報を漏らしたくないという姿勢が現れていた。
「ところで、湯川とべんてん亭に行かれましたよね」
石神は刑事の顔を見返していた。意外な方向からの質問だったので、咄嗟に言葉が出なかった。
「一昨日、たまたまお見かけしたんですよ。こちらは仕事中だったので、声をおかけできませんでしたが」
べんてん亭を見張っていたのだな、と石神は察した。
「湯川が、弁当を買いたいといったものですから。それで私が案内を」
「なぜべ
(本章未完,请翻页)