第15节(第6/6页)
た。
「結果的に、レンタルルームから行方をくらました男と指紋が一致したので身元がわかったわけだけど、指紋がなくても問題はなかっただろう。dna鑑定を行ったことは、前にも話したよな」
「聞いている。つまり、死体の指紋を焼いたこと自体、結局は無意味だったわけだ。ところが、もし犯人がそこまで計算に入れていたとしたらどうだろう」
「無駄になることを承知で指紋を焼いたというのか」
「もちろん犯人にとって意味はあった。ただしそれは死体の身元を隠すためではなかった。そばに放置された自転車が偽装工作でないと思わせるための工夫だった、とは考えられないだろうか」
意表をついた意見に、草薙は一瞬絶句した。
「じのところあれはやはり偽装工作だった、といいたいわけか」
「ただし、何を狙った偽装かは不明だ」湯川は跨っていた自転車から降りた。「被害者が自力でその自転車を運転して現場まで行った、と見せかけたかったのはたしかだろう。ではそのように偽装する意味は何か」
「実際には被害者は自力では動けなかったが、それをごまかすという意味があった」草薙はいった。「すでに殺されていて、死体となって運ばれたということだ。うちの班長なんかは、その説を取っている」
「君はその説に反対だったな。最有力容疑者の花岡靖子が運転免許を持ってないから、というのが理由だったと思うが」
「共犯者がいるとすれば話は別だ」草薙は答えた。
「まあそれはいい。そのことより僕が問題にしたいのは、自転車が盗まれた時刻のほうなんだ。午前十一時から午後十時の間と判明しているようだが、それを聞いて疑問に思ったんだ。よくまあそんなふうに特定できたものだな、とね」
「そんなこといっても、持ち主がそういってるんだから仕方がない。別に難しい話じゃないだろ」
「そこなんだ」湯川はコーヒーの缶を草薙のほうに突き出した。「なぜそうあっさりと持ち主が見つかったんだ」
「それまた難しい話じゃない。盗難届が出されていたんだ。だから照会すれば済む問題だ」
草薙が答えると、湯川は低く唸った。厳しい目をしているのが、サングラス越しでもわかった
「何だ。今度は何が気に入らない」