第18节(第3/6页)
うぜ」草薙はいった。「一度贅沢をした人間は、なかなか物事の水準を落とせないもんだ。ここにいる人種は、銀座族とは別だよ」
黒服を呼び、責任者から話を聞きたいのだが、といってみた。若い黒服は愛想笑いを消して、奥に消えた。
やがて別の黒服が来て、草薙たちはカウンター席に案内された。
「何かお飲みになりますか」黒服は訊いてきた。
「ビールをもらおうかな」草薙は答えた。
「いいんですか」黒服が去ってから、岸谷が訊いてきた。「勤務中ですよ」
「何も飲んでないんじゃ、ほかの客が変に思うだろ」
「ウーロン茶でもいいじゃないですか」
「ウーロン茶を飲みに、大の男二人がこんな店に来るかよ」
そんなことを話していると、シルバーグレーのスーツを着た、四十歳ぐらいの女が現れた。化粧が濃く、髪をアップにしていた。痩せているが、なかなかの美人だ。
「いらっしゃいませ。何か御用がおありだとか」抑えた声で尋ねてきた。唇には笑みが滲んでいる。
「警視庁から来ました」草薙も低い声を出した。
横で岸谷が上着の内ポケットに手を突っ込んだ。草薙はそれを制してから、改めて相手の女性を見た。「証明するものをお見せしたほうがいいですか」
「いえ、結構」彼女は草薙の横に腰かけた。同時に名刺を置いた。杉村園子と印刷されていた。
「こちらのママさんですね」
「一応そういうことになっています」杉村園子は微笑んで頷いた。雇われの身であることを隠す気はなさそうだった。
「なかなか盛況ですね」草薙は店内を見回していった。
「見かけだけですよ。この店は社長が税金対策でやってるようなものなんです。来ているお客さんたちだって、社長と繋がりのある人ばっかり」
「そうなんですか」
「この店なんて、いつどうなるかわかったものじゃありませんよ。お弁当屋さんを選んだ小代子さんは正解だったのかも」
気弱なことをいっているが、前任者の名前をさらりと出すところに、彼女なりのプライドが込められているように草薙は感じた。
「先日も何度か、うちの刑事がお邪魔したと思うんですが」
彼の言葉に彼女は頷いた。
「富樫さんのことで、何度かいらっしゃいました。大抵は私がお相手をしています。今日もやっぱりそのことで」
「すみません、しつこくて」
「前にいらした刑事さんにもいいましたけど、靖子さんを疑ってるんでしたら、見当違いだと思いますよ。だって、彼女には動機なんてないでしょ」
「いや、疑ってるというほどでは」草薙は笑顔を作り、手を振った。「捜査がなかなか進まないものですから、一から考え直そうということになったんです。それで、こうして伺ったわけでして」
「一からねえ」杉村園子は小さく吐息をついた。
「富樫慎二さんは三月五日に来ているそうですね」
「そうです。久しぶりだったし、何より、あの
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