第22节(第1/6页)
「弁当は買わないのか」案の定、湯川が訊いてきた。
「しっこい男だな。毎日買うわけじゃないといってるだろ」石神は眉根を寄せた。
「まあ、君が昼飯に困らないのならそれでいい」湯川は隣に並んできた。「死体のそばからは、自転車も発見されている。捜査によって、篠崎駅に止めてあったものが盗まれたのだと判明した。自転車には被害者のものと思われる指紋がついていた」
「それがどうかしたのか」
「死体の顔まで潰しておいて、自転車の指紋を消し忘れるとは、鈍どんな犯人もいたものだ。だが、わざと残しておいたのだとしたら話は変わってくる。その目的は何なのか」
「何だというんだ」
「自転車と被害者を結びつけるためかな。自転車が事件と無関係だと思われると、犯人としては都合が悪かった」
「どうして」
「被害者が自転車を使って篠崎駅から現場に行った、ということを、警察の手で掴んでほしかったからさ。しかもふつうの自転車ではだめだった」
「見つかったのは、ふつうの自転車じゃなかったのか」
「どこにでもあるママチチャリだ。だけど一つだけ特徴があった。新品同様だったということだ」
石神は全身の毛穴が開くのを感じた。息が荒くなるのを抑えるのに苦労していた。
おはようございます、と声をかけられ、はっとした。自転車に乗った女子高生が彼を追い越していくところだった。彼女は石神に向かって、軽く一礼した。
「あ、おはよう」あわてて応えた。
「感心だな。今じゃ、教師に挨拶する生徒なんていないと思っていた」湯川がいう。
「殆どいないよ。ところで、自転車が新品同様だったというのが、何か意味があるのか」
「警察じゃ、どうせ盗むのなら新しいほうがいいからだろうと考えたようだが、そんな単純な理由じゃない。犯人がこだわったのは、自転車がいつから篠崎駅に置かれていたか、だった」
「というと」
「犯人としては、駅に何日も放置されているような自転車には用がなかったんだよ。しかも持ち主には名乗り出てもらいたかった。そのためには新品同様である必要があった。買ったばかりの自転車を延々と放置しておく人は少ないし、もし盗まれたとしたら、警察に届ける可能性が高いからな。もっとも、これらのことは犯行をカムフラージュする絶対条件というわけではない。犯人にしてみれば、うまくいけばありがたいという気持ちで、成功の確率が高くなる方法を選んだというわけだ」
「ふうん」
石神は湯川の推理についてコメントせず、前だけを向いて歩いた。やがて学校が近づいてきた。歩道に生徒の姿が見られるようになった。
「面白そうな話なんで、もっと聞いていたいんだが」彼は立ち止まり、湯川のほうを向いた。「ここから先は遠慮してくれないか。生徒たちに聞かれたくないのでね」
「そのほうがいいだろうな。僕も、大まかなことは伝えられたと思うし」
「興味
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