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を出て、薄暗い廊下を歩いていると、階段を一人の若者が上がってきた。少し痩せた、やや神経質そうな顔をした若者のことを草薙は知っていた。湯川の下で学んでいる、常磐ときわという大学院生だった。以前草薙が湯川の留守中に訪ねた際、湯川の行き先は篠崎ではないか、と教えてくれた若者だ。
常磐のほうも草薙に気づいたらしく、小さく会釈してから通りすぎようとした。
「あ、ちょっと」草薙は声をかけた。戸惑った表情で振り返った常磐に、彼は笑顔を向けた。
「少し訊きたいことがあるんだけど、時間あるかな」
常磐は腕時計を見てから、少しだけなら、と答えた。
物理学研究室のある学舎を出て、主に理系の学生たちが使う食堂に入った。自動販売機でコーヒーを買い、テーブルを挟んで向き合った。
「君たちの研究室で飲むインスタントより、よっぽどうまいな」紙コップのコーヒーを一口飲んでから草薙はいった。大学院生の気持ちをほぐすためだった。
常磐は笑ったが、頬はまだ強張っているようだった。
世間話を少ししようかと思ったが、この調子では無意味だと判断し、草薙は本題に入ることにした。
「訊きたいことというのは、湯川助教授のことなんだ」草薙はいった。「最近、何か変わったことはなかったかな」
常磐は困惑している。質問の仕方がまずかったらしいと草薙は思った。
「大学の仕事とは関係のないことで、何か調べているとか、どこかへ出かけていったとか、そういうことはなかったかな」
常磐は首を捻った。真剣に考えているように見えた。
草薙は笑ってみせた。
「もちろん、奴が何かの事件に関係しているとか、そういうことじゃないんだ。ちょっと説明するのは難しいんだけど、どうも湯川は俺に気を遣って、何か隠していることがある感じなんだ。君も知っていると思うけど、あの男はなかなかの偏屈だからね」
こんな説明でどれだけのことが伝わったかは不明だったが、大学院生はやや表情を崩して頷いた。偏屈、という点だけは同意できたのかもしれない。
「何かお